効果的なフィードバックの記録方法:後で見返せるメモの取り方とコツ
フィードバック、どのように「記録」していますか?
日々の業務の中で、お客様やチームメンバーから様々なフィードバックを受け取ることがあるかと存じます。中には耳が痛いものや、どう受け止めて良いか分からないものもあるかもしれません。しかし、これらのフィードバックこそが、ご自身の成長や担当されているプロダクト・サービスの改善に向けた貴重な「声」となります。
せっかくいただいたフィードバックも、その場限りで流れてしまったり、記憶の片隅に置かれてしまったりすることがあるかもしれません。たくさんのフィードバックを受け取る中で、後から見返そうと思っても「あれは誰からいつ聞いた話だったか」「具体的に何について言っていたか」が曖昧になってしまう経験はございませんか。
フィードバックを自身の血肉とし、プロダクトの成長に繋げるための第一歩は、正確に「記録」することです。記録があるからこそ、後から見返したり、分析したり、具体的なアクションに繋げたりすることが可能になります。
この章では、なぜフィードバックの記録が重要なのか、そして、どのように記録すれば後から見返しやすく、活用しやすくなるのか、具体的な記録方法とコツをご紹介します。
なぜフィードバックの記録が重要なのか
フィードバックを記録することには、いくつかの重要なメリットがあります。
- 情報の正確性維持: 人の記憶は時間とともに曖昧になったり、歪曲されたりする可能性があります。受け取ったフィードバックをすぐに記録することで、その内容や状況を正確に保つことができます。
- 体系的な管理と分析: 記録されたフィードバックは、後からカテゴリ分けをしたり、特定のキーワードで検索したり、傾向を分析したりするための土台となります。記録がなければ、個々のフィードバックは断片的な情報のままになってしまいます。
- 変化の追跡: 時間を追ってフィードバックを記録することで、同じ問題が繰り返し指摘されているか、改善策に対する反応はどうかなど、状況の変化やフィードバックの変遷を追跡することができます。
- チームとの共有: 記録されたフィードバックは、チームや関係者と容易に共有できます。共通認識を持つことで、改善に向けた議論を深めたり、協力体制を築いたりすることが容易になります。
- 振り返りと学び: 自身の成長やプロダクトの進化の過程で、過去にどのようなフィードバックを受け、どのように対応してきたのかを振り返ることで、新たな学びや気づきを得ることができます。
日々の業務に追われる中でも、これらのメリットを理解することが、フィードバックを「ただ聞く」ことから「活かす」ことへの意識変革に繋がります。
どのような情報を記録すべきか
フィードバックを記録する際は、後から分析・活用しやすいように、単に内容だけでなく、いくつかの付随情報を一緒に記録することをお勧めします。記録しておきたい情報の例を挙げます。
- フィードバックの内容(Verbatim): 可能な限り、相手が実際に使った言葉に近い形で記録します。これにより、言葉のニュアンスや感情も含めて後から正確に把握できます。長文の場合は、要点を簡潔にまとめたサマリーも併記すると良いでしょう。
- 受け取った日時: いつそのフィードバックを受け取ったのかを記録します。特定のイベントやリリースの後に集中しているかなど、時間的な傾向を把握するのに役立ちます。
- フィードバックの提供者: 誰からのフィードバックかを記録します(例: 顧客、社内ユーザー、チームメンバー、上司など)。匿名でも構いませんが、可能な場合は立場や属性(例: ヘビーユーザー、新規顧客、特定の部署など)を記録すると、フィードバックの重みや背景を理解しやすくなります。
- フィードバックを受けた状況: どのような状況でそのフィードバックが発生したのかを記録します(例: 製品利用中の特定機能で、カスタマーサポートへの問い合わせで、ミーティング中に、アンケート回答でなど)。
- 対象: プロダクト・サービスの具体的にどの部分(機能、UI、ドキュメント、サポート対応など)に関するフィードバックかを明確に記録します。
- 重要度/緊急度(任意): 受け取った時点で感じた、そのフィードバックの重要度や対応の緊急度を簡単なレベルで記録しておくことも、後の優先順位付けの参考になります。
- 関連するアクション(任意): そのフィードバックに対して、すでに何か対応を検討・実行している場合は、その内容を記録しておくと、重複対応を防ぎ、対応状況を追跡できます。
これらの情報を構造的に記録することで、後から様々な切り口でフィードバックを分析し、具体的な改善や自身の行動変容に繋げることが容易になります。
効果的なフィードバックの記録方法とコツ
では、具体的にどのように記録すれば良いのでしょうか。特別なツールや複雑なシステムは必要ありません。まずは、ご自身が継続しやすい方法で始めることが大切です。
1. 記録するツールを選ぶ
手軽に始められるものから、少し専門的なものまで様々なツールが考えられます。
- ノート/メモ帳: 最も手軽な方法です。どこでもすぐに書き留められます。ただし、後からの検索や集計には向きません。
- Excel / スプレッドシート: 行をフィードバックごとに、列を「日時」「提供者」「内容」「対象」といった項目にして記録します。フィルタリングや簡単な集計(同じ内容の件数など)が可能で、多くの方が使い慣れているため始めやすい方法です。ペルソナの佐藤様もOfficeツールは使い慣れているとのことですので、まずはこの方法から始めるのも良いでしょう。
- 専用のフィードバック管理ツール: 体系的な管理、分析、チーム共有に特化したツールも存在します。カテゴリ分け、タグ付け、担当者割り当て、進捗管理といった機能が充実しています。初期設定や操作に慣れるまでの時間は必要ですが、フィードバック量が多い場合は強力な助けとなります。
- プロジェクト管理ツール: Trelloのようなタスク管理ツールをフィードバック管理に転用することも可能です。カードをフィードバックに見立て、リストでステータス(例: 未対応、検討中、対応済み)、ラベルでカテゴリや重要度を示すといった使い方ができます。
まずはご自身が最も抵抗なく、すぐに始められるツールを選んでみてください。大切なのは「記録を始めること」です。
2. 記録を習慣化するコツ
フィードバックを記録すること自体を習慣にすることが重要です。
- 受け取ったらすぐに記録する: 時間が経つと内容を忘れてしまったり、他の業務に紛れて記録し損ねたりします。フィードバックを受け取った直後、または一日の終わりにまとめて記録する時間を設けるなど、ルールを決めて実践します。
- 記録場所を固定する: 「フィードバックはここに書く」という場所やファイルを一つに決めます。あちこちにメモが散らばると、後から見つけるのが困難になります。
- テンプレートを用意する: Excelやスプレッドシートを使う場合は、「日時」「誰から」「対象」「内容」といった項目を列としてあらかじめ用意しておくと、記録漏れを防ぎ、スムーズに入力できます。
- 完璧を目指さない: 最初から全てを詳細に記録しようと意気込むと、負担になってしまいがちです。まずは「内容」と「誰から/いつ」だけでも構いません。慣れてきたら記録する項目を増やしていくのが現実的です。
- カテゴリ分け/タグ付けを意識する: 記録する際に、簡単なカテゴリ(例: バグ報告、機能要望、使いやすさ、デザインなど)やタグ(例:
ログイン
,決済
,UI
,ドキュメント
など)を付与することを意識すると、後からのフィルタリングや集計が格段に楽になります。最初から細かく分けすぎず、大まかな分類から始めると良いでしょう。
3. 記録の具体例(Excel/スプレッドシートの場合)
| 日時 | 提供者 | 種別 | 対象機能/画面 | フィードバック内容(Verbatim or Summary) | 重要度 | 状況/関連アクション | | :--------- | :------- | :----------- | :------------ | :------------------------------------------------------------------------- | :----- | :------------------ | | 2023/10/26 | 顧客(A氏) | バグ報告 | 決済機能 | 「クレジットカード情報を入力する際に、エラーメッセージが出ず次に進めなくなった」 | 高 | サポートへ共有済み | | 2023/10/26 | 社内(開発) | 機能要望 | レポート画面 | 「レポートのCSVエクスポートで、期間指定ができるようにしてほしいという要望が多い」 | 中 | 要件整理が必要 | | 2023/10/27 | 顧客(B氏) | 使いやすさ | マイページ | 「マイページのデザインが少し古く感じる。もっとシンプルにできないか」 | 低 | デザインチームと相談 | | 2023/10/27 | 上司 | 改善提案 | オンボーディング | 「新規ユーザーが、特定の機能を使い始めるまでのハードルが高いようだ」 | 高 | ユーザーテスト検討 |
このように記録しておけば、例えば「バグ報告」だけをフィルタリングしたり、「決済機能」に関するフィードバックだけを抽出したりすることが容易になります。
記録したフィードバックをどう活用するか
正確に記録されたフィードバックは、宝の山です。記録があることで、初めて具体的な分析や活用に進むことができます。
- 傾向分析: 特定の期間にどのようなフィードバックが多いか、どの機能に関する指摘が多いか、といった傾向を把握します。
- 優先順位付け: 記録された情報をもとに、重要度や影響度が高いフィードバックを特定し、対応の優先順位を決定します。
- 改善策の立案: 具体的なフィードバックの内容をもとに、プロダクトやサービス、あるいは自身の行動に対する具体的な改善策を考えます。
- チームへの報告/共有: 集計・分析結果をチームメンバーや上司に共有し、状況の報告や改善に向けた協力を仰ぎます。記録が整然としているほど、分かりやすい報告が可能です。
これらのステップについては、サイト内の他の記事で詳しく解説しています。まずは「正しく記録する」という最初のステップをしっかりと踏み出すことから始めてみてください。
まとめ:記録は成長と改善の第一歩
フィードバックの記録は、派手な作業ではないかもしれませんが、ご自身の成長やプロダクト・サービスの改善にとって非常に重要な基盤となります。日々の忙しさの中で後回しにしてしまいがちなステップかもしれませんが、まずは「受け取ったフィードバックを、後から見返せる形で書き留める」という簡単なことから始めてみてください。
今回ご紹介した記録方法やコツが、あなたのフィードバック管理の一助となれば幸いです。継続することで、やがてフィードバックが単なる「声」ではなく、具体的なアクションと成果に繋がる強力なツールとなることを実感いただけるかと存じます。